概要
医師はウサギのかぶりものをした風変わりな男だが、腕は確か。
そんなクリニックには法度がある。
初田の顔を暴いてはならない。
初田ハートクリニックに、今日も悩みを抱えた人がやってくる。
令和の日本が舞台の精神医療物語。
ケース1中村(なかむら)コウキの場合 〜猫の首を狩った少年〜
猫を殺して高校を退学になった少年、コウキ。コウキは善悪の判断がついていなかった。
初田はなぜ少年がこのような精神状態になったのかを紐解いていく。
ケース2根津美(ねづみ)ネルの場合 〜眠り病の同居人〜
初田は三十歳のとき、曾祖母の葬儀でネルと出会う。突発的に眠りに落ちてしまうネルを見て病院で精密検査することを勧めるが……
ケース3有沢(ありさわ)アリスの場合 〜自傷癖
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!いつか青空の下で、お茶会をしよう。
主人公はクリニックの精神科医をやっている。顔を隠すためにウサギのマスクを頭からすっぽり被っているが、その腕は確かだ。クリニックに通う患者たちに向き合い、問題を的確にとらえ、解決に導いていく。
この物語の患者たちが、『不思議の国のアリス』になぞらえられているのも、この作品の魅力の一つだ。例えば突然の睡魔に襲われ、眠ってしまう少女はネズミさんという名前で、ウサギマスクの主人公に懐中時計のねじを巻く約束をする。傷だらけのアリスは、家族に虐げられ、歪んだ愛情で満ちた家を飛び出す。他にも「普通」が分からない少年や、何をやっても失敗ばかりする男性など、クリニックには連日個性的な患者たちがやって来る。…続きを読む - ★★★ Excellent!!!文句無し、素晴らしい
他に言葉は要りません。素晴らしいです。
ご自身も精神科にお勤めの方なのでしょうか?
そうであれば日々の賜物であり、それを物語としてまとめあげた手腕に拍手喝采です。私にはとても同じことは出来ず、しようとも思えません。発想すら出来ぬ次第です。
もし医療とは無縁のところにいらっしゃる方なら、その検索力と思慮深さ、そして創造性に拍手です。ご紹介いただきありがとうございました!星★を3つしか送れないことが残念でなりません!!
文章がとても読みやすく、それぞれの登場人物の心情の描写も丁寧で、そしてハッとさせられます。まだ途中なので、続きも楽しみに読ませていただきます。 - ★★★ Excellent!!!精神医療と己の内面を見つめる人々
精神医療物語という書くのが難しい題材ですが、病気との関わり方、人と人の関わり方が丁寧に書かれており、非常に完成度が高いです。
主人公は、初田ハートクリニックの院長・初田初斗。ウサギの被り物をした変人と見られていますが、精神科医として患者と向き合う姿勢は非常に真摯です。
医療に関する小説・ドラマ・漫画は多いですが、本作は精神医療にのみ的を絞り、かつ、(他の方も言及している通り)登場人物のキャラクターが個性的な作品となっているため、肩肘を張らずに読むことができます。
個性的といっても、無理なキャラづけではなく、初田先生のウサギの被り物にもしっかりとした理由があります。
精神関係の病気は、中々他…続きを読む - ★★★ Excellent!!!まるで陽だまりのよう。情熱や正義とは一味違う、変人による精神医療ドラマ
ウサギの被り物をした精神科医・初田。変わり者の彼のクリニックには様々な患者がやってくる。目に見えない、「普通とは違うもの」を抱えて迷う彼・彼女たちを導くため、初田は患者たちやその家族と向き合っていく。
連作短編的な形式の精神医療モノです。パーソナリティ障害などの精神障害、投影法・行動療法などの専門的な内容を含むのはもちろんですが、メインは治療過程で見えてくる葛藤や成長などの人間ドラマにあると思いました。
患者はクリニックに「つらい」と泣きながら訴えにくるのではありません。なぜ受診する必要があるのかわかっていなかったり、自分が傷つけられていることに無自覚だったりします。さらには、問題とな…続きを読む - ★★★ Excellent!!!とんでもないクオリティ。古参ぶっていいですか?笑
カクヨムは他人の評価の数が全てでないことをたまに教えてくれます。
こういう作品のことです。
精神科の個人院を舞台に、あらゆる患者の治療を描く本作。序盤、医療ドラマや医療漫画、医療小説では一般的な展開かと思われますが、この作品が他作品と一線を画すのは登場人物のキャラクターが個性に溢れていること、絵本のような芸術性を秘めていること、それから全体を通したドラマが背後で進行していることです。
芸術面を表に出した描写がたまに出てくるにも関わらず、文体はやさしめで読みやすく、人間ドラマで重くなりがちな雰囲気も非現実的なキャラクターでうまい具合に緩和してくれています。
感動です。早く本の形で手をと…続きを読む