お祭り。まさにそう表現したくなる、楽しさいっぱいの作品です。
弁護士と助手が会話する。とある「羽毛布団」について。
それについての「マニュアル」があったらしいが、どうも読まずに捨てたらしいこと。
それからも話を聞いていると、「トリ」のマスコットを描いたらしい人物の話など、どこかで聞き覚えのあるようなエピソードがちらほら。
その後、山中の廃墟に集まり、「一年に一度のお祭り」を祝うことに。
弁護士、画家、ひなあられのお店の人……
本作に登場するのは、作者である咲野ひさと氏のこれまでの登場してきた様々ななキャラクターたち。
それらが一同に会することにより、これまでの作品がシェアード・ユニバースとして結実する。
それぞれ作風も雰囲気も異なる物語のキャラが集まることで、これまでの作品の中で光っていた個性がより輝きを増すことに。
「トールキンを訴えたいと語るゴブリンの話」、「老舗の店で知識マウントをしたがる男」、などなど。
どの作品もとても楽しかったので、本作を読んで雰囲気が気に入った方は、これまでの作品も遡んで読んでみることをオススメします。
特に重要なのが「ヌクヌク羽布団」。本作で弁護士が捨ててしまったという「布団のマニュアル」がそこで登場します。
読まずに捨てたと語られていたが、そちらの作品を読めば分かります。
「あ、マニュアルは無視して正解だったんだ……」と。
とある弁護士が、羽毛布団を買ったところからこの物語は始まる。
ちなみにこの弁護士は、この作家先生の前回の物語の登場人物である。
通な演出だ。
それで今回の物語なのだが、
キャッチフレーズにある通り読めば読むほどと、ある。
逆に、1度読んだだけでは果たして羽毛布団が作られた経緯や、
それが弁護士に周り巡ったかは、わからないかもしれない。
第二話で何やら不穏な会話のオンパレードなのだ。
どうやら、弁護士の購入した羽毛布団の正体が語られているが、
それを使用するとどうなるのか、
おそらく……説明書に書いてあるのだろうかと思案されるが、
ここがこの作家先生の遺した余白の部分なのである。
だので想像する事になるのだが、
これぞまさに私好みの演劇的な部分で、
この物語を読んだ別の先生と語り合いたくなるのだ。
余白を残してくれる、というのは、実にありがたいことなのだ。
きっとあなたも、同じ気持ちになることを祈る。
ご一読を。