テクニカルタームを多用しながらも、読者の注意を離さない巧みな筆力に促されるように、プロフェッサー・熊沢にまつわる謎のなかへと私も身を投じる。
「フェアリーテイル財団」が主催している開発プロジェクトに参加している岩谷。
やりがいを感じていて、オーバーワークをこなすほどのめり込んでいる。
「クマサワはAIか何かで、実在しない人間なんじゃないか?」
そのウワサに懐疑的な岩谷。
彼は血の通った人間だろうと。
ある時プロジェクトはトラブルに見舞われる。
対応に追われる中、岩谷は熊沢から呼び出しを受ける。
そこで彼は驚愕の真実を目の当たりにする……。
人間の執念の力にショックを受けました。
ラストのくだりでまたショックです。
神の領域に迫るSF作品を堪能しました。
これは、世の中が発展していくといつか本当に実現するかもしれない。そう思わせられる作品でした。
「フェアリーテイル」と名付けられた一大プロジェクトが立ち上げられ、プログラムの世界で何かが作られ始める。
しかし全貌は明かされないまま、主人公たちはそれに関わる仕事だけを行うことになります。
その先で、「フェアリーテイル」とはなんなのかという疑問の答えが見えてくるようになります。
AIとかプログラムが今後も発展していけば、本作で描かれていたような出来事が本当に起こるかもしれない。
それは多分、人間としては強く望まれることだろうから、技術の進歩によって可能になるならば手を出す人間は確実に現れる。
基本的に、「これ」は最終的には良いものになるのか。それとも突き詰めると何か問題が起きてしまうのか。色々と考えさせられるテーマでした。