序盤を読んでの感想です。
物語の幕開けは、静かに閉じ込められた貴族の夫人の息苦しさから始まります。けれどただの閉塞感に終始するのではなく、その奥にある小さな希望と、彼女自身が見つけ出す「新しい世界」のきらめきが、読み手の心にそっと灯をつけます。
言葉少なな夫、無関心な使用人、そして押し付けられる貴族の務め。そんな日々の中、彼女が偶然出会ったのは、魔石の粉末入りの絵の具。そして、それを使った絵を描くことで、彼女の世界がほんの少しずつ変わっていく。この「描く」という行為が、まるで鳥かごの中の小鳥が初めて翼を広げるような感覚を与えてくれます。
何気なく手に取った絵筆が、彼女にとっての自由へと繋がっていく過程は、まるで一枚の美しい絵が描き上がるように、静かで、けれど確かな熱を帯びています。物語の序盤ながら、すでに未来への期待と冒険の予感に満ちていて、これからどんな風に彼女の人生が彩られていくのか、期待が膨らみます。
私たちのすぐそばにも、彼女のような小さな変化のきっかけがあるのかもしれない――そんな気持ちにさせてくれる、爽やかな物語の始まりでした。