一気に読了してしまいました。感情が昂ぶりすぎて、途中で何度か読むのを止めて深呼吸していたほどです(笑)。この作品、ぜひ書籍化してほしいと思いました。お金を出して本棚に並べたい、そして家で何度もじっくり読み返したい。だって、外でスマホを見ながらニヤけてる自分なんて、誰にも見られたくないですから。
この作品の最大の魅力は、劇的な展開に頼らず、言葉のリズムと繊細な場面描写によって、感情をじわじわと滲み出させていくところにあります。
主人公の迷い、不安、執着、嫉妬といった感情は、大きな出来事ではなく、語尾の伸び、息遣い、あるいは「ふぅー……」というため息のような微細な表現に宿っています。それらは「物語の進行」を追うというより、「心の奥に入っていく」ような読書体験を生み出していて、読んでいてまるで呼吸を共有しているかのような感覚になりました。
そして、場面描写も見事です。模試が終わったあとの静かな教室、温泉街の道端から立ち上る湯気、夕陽が差し込む部屋——どれも単なる風景ではなく、登場人物の心理を映し出す鏡のように機能しています。日常の一場面が、そのまま登場人物の内面と自然にリンクしていて、読み手の感情にもそっと染み込んできます。
登場人物たちの素直さと行動力にも心を動かされました。自分の気持ちに向き合って、きちんと言葉にして伝えようとする姿がまぶしくて、健気で、とても愛おしい。そして彼女たちのそばには、優しさに満ちた“天使”のような友人たちがいて、その関係性がまた一層この物語を温かく、かけがえのないものにしてくれています。
VTuberというテーマに馴染みのない人でも、この作品にはすんなり入っていけると思います。なぜならこの物語が描いているのは、職業やジャンルの話ではなく、「誰かを好きになること」や「自分の在り方をどう受け止めるか」という、とても普遍的な感情だからです。むしろ、この作品のおかげで、私自身VTuberという世界に少しだけ興味が湧きました。
ストーリーの内容についてはあえてあまり触れません。なぜなら、これはネタバレをして評価するようなタイプの物語ではないから。読み進めていくうちに、自然とその魅力がにじみ出てくる——そんな作品です。どうか先入観を持たずに、ゆっくりとこの物語の扉を開いてみてください。
とにかく、甘くてあたたかい読後感でした。何度も心がとろけてしまい、きっと近いうちに、もう一度読み返してしまうと思います。